なぜ?アニエスベーBHV撤退の裏にSHEINの影、現地の反応は?

アニエスベー、パリBHV撤退の裏側:SHEINへの「倫理的NO」とフランスの規制動向

パリの象徴的な百貨店、BHV Marais(ベー・アッシュ・ヴェー・マレ)。フランスを代表するブランド、アニエスベーが、この場所から撤退したという話題は、世間に大きなに衝撃を与えました。またこの事実は単なるテナントの移動以上の意味を持っています。

今回の撤退の背景には、収益性の問題だけでなく、**ウルトラ・ファストファッションのひとつであるSHEIN(シーイン)**に対する、アニエスベーの強い倫理的反発が存在すると考えられます。この記事では、フランス政府が規制に乗り出すほど批判が高まるSHEINの存在が、伝統的なアニエスベーのブランド戦略にどう影響したのかをのぞいてみましょう!


 

衝撃のニュース:パリの老舗百貨店BHVからアニエスベーが撤退

アニエスベーは、流行に左右されない「フレンチ・ベーシック」を体現し、サステナビリティ(持続可能性)や環境保護を重視するブランドです。そのアニエスベーが、高コストな一等地を離れる決断は、「ブランドの価値や思想を守る」という強い意志を世間に感じさせなのではないでしょうか。またXにてアニエス・ベージャパン公式が「現状BHVからは10社強が撤退していますが、今回のSHEIN出店に対する決定の背景については対話を続けてまいります。
”私が言えることは一つ。たくさんの服を買うよりも、少なくても“良いもの”を選びたい、という事です”」とポストしています。この投稿は2万近くリポストされており、日本でも大きな話題となっています。

アニエスベーの哲学と相容れないSHEINの倫理的・環境的問題点

アニエスベーがSHEINへ反発する最大の要因は、その倫理的・環境的な深刻な問題です

SHEINは模倣品(知的財産権侵害)の販売や、製品から発がん性物質などの有害物質が検出されたという報道が世界中で相次いでおり、製品の安全性やブランドの信頼性が大きく問われています。

このようなSHEINの「安さ」と「速さ」を追求し安全や環境への配慮に欠ける姿勢が、アニエスベーの「長く使うための価値、人にも地球にもやさしいものづくり」という哲学と根本的に相容れないことがわかります。その結果今回のSHEINのBHV出展に伴いアニエス・ベーが撤退するという結果になりました。

SHEINへのフランスの国としての規制と制裁

この話題に関して、フランスという国はどのような姿勢をとっているのでしょうか?

フランス政府は今年6月に、SHEINや「Temu(テム)」といった、環境への悪影響が大きいとされるウルトラ・ファストファッションに関連する企業・製品の広告を全面的に禁止する条項を追加した法案が可決しています。これは、ファッション業界の環境負荷を規制する、国際的にも注目される厳しい措置です。これにより、彼らのビジネスモデルが社会的・環境的に許容できないという強いメッセージが示されました。

つまりフランスという国としてはアニエス・ベー側の意見だということがわかります。

さらに、今年7月には、フランスの消費者保護当局がSHEINに対し、4000万ユーロ(約67億6285万円)もの巨額の罰金を科しました。これは、消費者を誤認させるような価格表示や、実態を伴わない誇張されたサステナビリティ訴求(環境に配慮していると見せかける不当な行為)などの不当な販売行為が問題視されたからです。

この一連の動きは、フランスというファッション大国において、SHEINのビジネスモデルが倫理的にも法的にも重大な批判の対象となっていることを明確に示しています。

アニエスベーだけじゃない、BHV撤退を決めた他ブランド

アニエスベーがBHVという高コストな場所を離れたのは、「誰と共存するか」という、ブランドの根幹に関わる哲学的な選択であり、ブランドの信用を守るための戦略だと考えられます。

今回その戦略をとったのはアニエスベーだけではありませんでした。他のブランドではA.P.C.(アーペーセー)、フィガレ(Figaret)、リヴドロワ(Rivedroite)など10社が同様に撤退を表明しています。

なぜBHVはSHEINの出店に踏み切ったのか

BHVは、かつて百貨店大手ギャラリー・ラファイエットが所有していましたが、若手実業家フレデリック・メルラン氏が率いるSGM社が商号と営業権を買い取り、傘下に収めました。またSGMはギャラリー・ラファイエットの地方店舗のうち、7店舗(アンジェ、ディジョン、グルノーブル、ルマン、リモージュ、オルレアン、ランス)の営業権を買い取っており、これら地方店舗にもSHEINを入居させる計画を発表していたが、これにイメージ低下を恐れるギャラリー・ラファイエットが反対しました。するとギャラリー・ラファイエットとSGMの間の提携契約が解消され、SGMは「ギャラリー・ラファイエット」を名乗れなくなりました。そこでSGMは地方店舗を「BHV」名義に改めて事業を継続する方針を発表しています。

つまり百貨店大手が若手実業家に買収されたことで、経営方針が変わりSHEINというウルトラファストファッションを百貨店という場に受け入れることになったのです。

 

現地パリ市民の反応は?

まず批判的な反応について見ていきましょう。

店舗の外では数百人規模の抗議デモが発生した。手作りのプラカードや、SHEINに反対する署名サイトへ誘導するQRコード付きのビラを手にした市民や政治家が集結した。

次に好意的な意見です。

開店を前に午前中から入場整理券を求める客が列を作った。20代から80代まで幅広い年代の来店客が口をそろえるのは「価格の安さ」。60代の女性客は、「まずは価格。BHVにこんなに安い商品が並ぶなんて思わなかった。これなら来てみようと思えるわ」と語った。

WWD(Women’s Wear Daily)」の日本版ファッション業界専門紙「WWDJAPAN」より

このように現地パリでは2つの世論がぶつかり合っているようです。

安さvs信用どちらをとるのか?

今回のアニエスベーのBHV撤退は、「安ければ何でもアリ」という風潮に、「待った」をかけた伝統的なファッション界側の反撃だと受け取れます。

そしてフランス政府がSHEINに法律や罰金で規制を始めたことは、アニエスベーのような「倫理的なブランド」にとって追い風です。これからは、「どれだけ誠実か」「どれだけ環境に優しいか」という「信用」こそが、デジタル時代に最も価値のある「付加価値」になるかもしれません。

安すぎる服の裏側にある問題に、私たち消費者ももっと目を向けるべきだと感じさせる話題でしたね。皆さんはどちらのブランドを今後も買いたいと感じたでしょうか?

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